アジア・フリーク(Asia Freak)

タイを中心にアジア探索の記録

竹中先生、これからの「世界経済」について本音を話していいですか?

 目次 

第1部 世界情勢を読み解くインテリジェンス対談(日本だけが難民と無縁でいられるわけがない
安保法制成立で日本が考えていること
中国の成長が止まれば「経済難民」が日本に
世界経済に大打撃を与えかねない中東の情勢は今)
第2部 世界経済を読み解く戦略地図(世界情勢から経済への影響を読み解く
世界経済のリスクを乗り切る投資とは?
混迷を極める世界情勢の中で、日本は何をすべきなのか?
投資の世界に身を置けば、おのずと世界経済は見えてくる)
付録 外為どっとコム総合研究所「特別寄稿」

 

Review

 2018年2月8日(金曜日)

  内容は、下記の通り。

  株主、投資家を対象としたセミナーで、世界情勢の見方、行方を分析した対談は、勉強になる。

  耳を傾けるに値する評論家には、いくつかのタイプがあると思う。

  1. 現状分析し、将来を予測するタイプ
  2. 現状分析し、将来を予測し、自分の哲学、信念に基づいて憂う事態になる危険がある場合、現実的に受け入れ可能な提言・提案(ソリューション)を、「予測」という言葉で訴えるタイプ

 

  外務省出身で1のタイプは、宮家邦彦。現状分析と予測はするけど、使命感をもってソリューション提示まではしないタイプ。

  同じ外務省出身、佐藤優は、間違いなく2のタイプだと思う。キリスト教徒としての思想・哲学が強く根底にあるため、社会と世界を語ると同時に、その思想・哲学に照らして、ソリューション提示までしたいという姿勢。

 

  1のタイプは、傍観者的で無責任な発言をしがちだけど、2のタイプは、信念に基づいて、使命感をもって問題・課題に対するソリューション(解決策)を発言しようとする。

  ネット上で、佐藤優を批判している内容をみると、評論家を1のタイプとしてしか見ていないように思う。つまり、佐藤優の発言は、ソリューション提示の意図があることを理解していないことからの批判。または、価値観が違うことからの批判。

 

  2のタイプは、発言の仕方は、

  1. 問題・課題の提示
  2. このまま進むと、〇〇の事態に陥る可能性があると推測
  3. ソリューション(打開策)として、□□をするのではないかと「予測」

  この3の「予測」は、実際には、当事者が考え付いていないことかもしれない。

  そこへ、「予測」という言い方で、実際にはソリューション(打開策)を提示、訴えている。

  当然、このソリューション通りにならないこともあり、その場合は、「予測」はハズレとなる。

  でも、ソリューションの提示ということに、発言の価値がある。ソリューションを提示する意思の無い、無責任で傍観者的な「未来予測」とは、主体的に問題に取り組むという点で、対極的だ。

  この意味で、佐藤優の発言は、ソリューション提示的な意味合いで、耳を傾けると価値があるとみている。

 

  第1部では、難民問題への姿勢、中東事情、日本の安保法制と日米地位協定など、観点は勉強になる。

 

  第2部では、投資家に向けた寄稿内容だけど、ISの中東での弱体化が、ヨーロッパでのテロに繋がったという佐藤優のインテリジェンス解説が興味深い。

  人は、ある局面で命の危険を感じる程の攻撃をうける(弱体化する、四面楚歌に陥る)と、打開する局面を求めて、戦線を広げる(別のところでどうにかしようとする)というインテリジェンスの方程式があるという。

  以前、職場の先輩が話してくれたことを思い出した。

  客先の購買は、優位に立って、サプライヤーに値下げの圧力を掛けることが往々にしてある。

  サプライヤーは、戦略(Strategy)として、客先購買を八方塞がりの状況に追い込めば、こちらから売り込まなくても、客先の方から助けを求めてくる。

  その時、出口を提供すれば、可能な限り言い値でも流れ込んでくる、と。

  更に、こうも言われた。

  泣く赤子(助けを求める客)の腕を、笑ってヒネることができるか。笑って刺すことができるか、と。

  表現はグロいけど、塞ぎ込んで、タイミングを見図らってソリューション提示し、自分の方へ誘い込むという戦略は、ビジネスでは有効だと思う。

  この手法は、あくまでも戦略で、使い方によっては、非人道的なヤクザ商法にもなるので、注意が必要。

 

  付録では、各国の経済政策、貨幣のメリット、デメリットなどが分析されている。実際に投資に関わっているか、少し専門知識が無いと、読みづらい。

 

  トランプが大統領になったらという情勢の読みも、2018年2月現在、大方当たっている。

  同意できない箇所もあるけど、

全体としては、とても勉強になる本だった。