looking2016年10月10日(月曜日)
南イサーン(イサーン地域の南部)のブリラムで仕事。
ラオスとカンボジアに接するイサーン地域の人は、標準タイ語、イサーン方言(各地のバラエティ)、ラオス語の三つを話すことはよく聞く。
実際に各地出身者といると、使い分けしている場面を見ることもある。
ブリラム(บุรีรัมย์ bùriiram)、スリン(สุรินทร์ sù̀rin)、サケオ(สระแก้ว sàkæ̂æo)など、カンボジアと国境を接する地域の人は、加えてカンボジア語も話す人が多いこともよく聞く。
実際、カンボジアと接するサケオ県の国境町アランヤプラテートの市場では、タイ語よりカンボジア語か英語の方がいいという店の人たちも多い。
今回、ブリラムで、現地の短期労働者に手伝ってもらい、仕事をする機会があった。
中にはタイ語があまり通じず、カンボジア語で会話している人たちもいた。
たまたま声を掛けて手伝ってもらった二人は、カンボジア語で話していた。かと思えば、同じ二人でタイ語で話している時もあって、とても興味深かった。
訊くと、二人とも同じように、ブリラムで生まれ育って、タイ語もカンボジア語も母語として習得している。
通常、言語の調査や統計では、日本語、英語、スペイン語、フランス語、アラビア語など、ネイティブレベルの複数言語話者には、軸足を置いている母語が一つあって、その上で他の言語の運用能力の高低がある。その人の価値観や生活スタイルは、軸足の言語に大きく影響を受けていることが多い。
参考)複数文化圏の要素を受継ぐ人についての関連動画が、コレ。
ウエンツ瑛士「ハーフには2種類ある」
日本語と英語、日本語とアラビア語との言語(文法、表現、価値観など)の差異に比べて、タイ語とカンボジア語の場合、お互い文化や価値観が近いので、言語切替の感覚としては、方言切替の感覚なんだろうか。
タイ語とラオス語との関係は近い姉妹関係だけど、系統の違うタイ語とカンボジア語を切り替えて話す基準は何なのか、彼らを見ていると興味がわく。
少なくとも、複数言語の運用能力の高さは、それだけ多面的な世界観を使い分けていると言えると思う。言語によって虹の色を何種類と見るかが違うように、複数言語に精通していることは、多様な世界観の持ち主と言える。
その分、客観性や分析能力の高さ、すぐ感情的にならず、冷静な判断能力なども期待できると思う。
ただし、その能力を磨いて向上させるには、適切な教育の機会が必要なことは、言うまでもない。