アジア・フリーク(Asia Freak)

タイを中心にアジア探索の記録

安倍政権への遺言 首相、これだけはいいたい

 

 ■【目次】
第一章 安倍政権への遺言
・安倍政権はなぜ「右傾化」したのか
・「二枚舌」の安保法制で国民をだますのはやめよ
・「右傾化」する安部首相を止めるには

第二章 右傾化が止まらない
靖国問題から抜け落ちた日本人自身による「総括」
改憲しなかったのは、決して96条のせいではない
マッカーサーの「決断」だけで戦後は終わらない
・「新しい世代」のクールな戦争観と国家観に驚いた
集団的自衛権は「ゼロか百か」で論じるものにあらず
ほか

第三章 アベノミクスの行方
・官僚を使えなかった民主党は第三極に没落した
・「橋下氏バッシング」でいちばん得をしたのは安倍政権
・どの党も自民党との差異を怖がっている
・「アホノミクス」と言うならば、対案を出すべきだ
共産党躍進の裏に「新自由主義」なる呪縛語アリ
ほか

第四章 日米同盟とアジア
ASEAN外遊とJKT48の大きな意義
・なぜアルジェリアは「人命最優先」ではないのか
習近平も止められない中国軍の危険な「暴走」
北朝鮮のミサイル騒ぎで笑う国と、困惑する国
北朝鮮が私に明かしていた「特定失踪者」の帰国案
ほか

第五章 出口のない原発
・国民が見放したリアリティーなき「原発ゼロ」
原発推進派に問う「トイレのないマンション」問題
・「直感の天才」小泉元首相が日本の原発政策を変える
・小泉元首相の「脱原発宣言」は安倍政権への挑発だ
・小泉・細川コンビの真の狙いは「脱原発国民運動」だ
ほか

 

■レビュー

 

  普段、テレビなどの討論番組では伝わりきらない、田原総一朗の見解が、整理されていたと思う。

  2015年7月(オバマ大統領の時代)の出版で、2017年12月(トランプ大統領の時代)の現在、状況が変わっているものの、読後感としては、ジャーナリストがどんな問題意識をもっているのかという視点を知れたし、日本の政治問題についての導入的な内容を知ることもできたので、期待していた以上に良かった。

 

  戦争を体験したことから、ジャーナリストを目指したこと

  特定秘密保護法に対する問題点など。

 

  違和感あったのは、「リベラルと保守」、「かつての自民党は内部にタカ派ハト派が議論を闘わしていたけど今の自民党内には対立軸が無いので不満だ」、などという、過去の構図に囚われて、変化を受け入れられないという姿勢。

 

  また、ご自身は「ジャーナリスト」を、どう定義しているのでしょうか。

  「もっと議論すべきだ」、「批判だけでなく、対案を出せ」と、しきりに言われているものの、田原総一朗氏の見解、対案の提示は、ほぼ無い。

  ジャーナリストとは、情報の入手・整理・発信者で、結論や提言はしない、という使命感なのだろうか。

  であれば、ジャーナリストとしての知見を踏まえて、対案・提言者という別の立場があってもいい。この書籍は、そんな別の使命感から出版されたものだと思う。

  だから尚更、戦争を経て、ジャーナリストを志した田原氏自身、どう考えるのか、具体的な対案、提言について、じっくり知ることができればよかった。

 

 

  ちなみに、細かいことかもしれないけど、書籍の帯びにあるキャッチフレーズ(?)には違和感がある。

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『私のような年寄りは、右傾化は断固阻止する』

  書籍中、田原氏の発言から引用したものだが、出版社 朝日新書のセンスだろうか。

  「私のような年寄り」って、どんな、だよ!

  本文を読むと、「私のような=戦争を経験した」という意味なんだろうが、田原総一朗のコピー人間が何人もいるわけではないから、少なくとも

  「私(田原総一朗)は、右傾化を断固阻止する」

  とするなど、他の表現にしないと、「個(田原)=特定の全体」という押し付けがましい発想に思われる。

  これが朝日新書の姿勢だと思われる。

  最近の朝日新聞社系の論説には、「朝日の思想・見解(個)=全体にとっての正義・正論」という押し付けがましい表現に違和感を覚えることが多いこととも合致する。