中国語のすすめ
■レビュー
1964年出版の中国語の基礎知識についての導入本。
戦前、幼少から中国本土に縁があった著者の中国、中国語への思いが、自然と専門家への道へ進ませた。
中国語の導入的知識について、網羅的に、どの項目も興味深く読めた。
メモ
■中国の文字改革
1928年、漢字を廃棄し、国字ローマ字化を図るも普及に難あり失敗。
中国で漢字を廃棄する試みがあったとはビックリ。
■「支那」の名称について
紀元前1400年頃、インドの古詩で中国を指してシナと言われる。その後、中国人がシナの音を支那、至那、脂那と転写。
秦を外国語話者がシナと発音した(大漢和辞典)というのは、歴史の状況からありえない。(学僧蘇曼殊)
■是〜
「今日は“祝日で”出勤していない」「“風邪を引いている”」「ビッグバーガーを“セットで”」のように、文の中で、状態や条件を明確に言う場合の表現がある。
中国語、タイ語、ベトナム語などでも同じ用法があるのは面白い。英語のbe動詞とは異なる。
中国語では「是 〜」
タイ語では「เป็น pen 〜」
ベトナム語では「là 〜」
■副動詞はタイ語、日本語と共通の発想
言って“おく”、食べて“みる”など、日本語やタイ語と同じ表現方法がある。
■中国語と漢文、口語と文語
簡単にいうと、
- 漢文は、昔の文語(書き言葉)で、時代によっても変化する。
- 中国語は、現代の話し言葉。以前は、口語(話し言葉)と文語(書き言葉)とで異なっていたけど、文語は、口語に合わせるように変化した。今でも、公文書などで、口語とは違う表記はある。
■今の四声とむかしの四声
昔:-----平声------、上声、-------、入声
今:上平、下平、上声、去声
- 共通しているのは、上声のみ。
- 平声が、上平と下平に分かれた。
- 面白いのは、入声という声調。いわゆる日本語の「詰まる音」に近い音。「あっ!危ない!」「どっ、と押し寄せる」の「っ」で、一旦、喉で空気の流れを止める(声門閉鎖)の声調。これは、歴史的経緯や中国語との関連があるかは知らないけど、現代の標準ベトナム語にある声調。