新前軍医のビルマ俘虜記 狼兵団 地獄の収容所奮闘録 (光人社NF文庫)
- 作者: 三島四郎
- 出版社/メーカー: 潮書房光人社
- 発売日: 2018/05/24
- メディア: 文庫
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■レビュー
ビルマ(ミャンマー)で終戦を迎え、その後、ビルマから日本へ帰国するまでの記録。
現地で重い病気に罹っていた、知り合ったばかりの軍人が、明け方まで話をし、床について、その翌朝、冷たくなって死んていた。日々積み上がる死体の山を、穴を掘って埋める労務が、残された軍人の仕事にもなっていた。
騙されて連れてこられ、望まない慰安婦にされた裕福な家の出身である韓国人女性の話もある。
あとがきまでいれると、400ページ長の文庫本で、丹念に読み込むには、それなりに時間が掛かる。
貴重な戦後の記録でもあるので、関心ある項目を掻い摘んで読むのでもいい。
■抜粋メモ
第一章 軍医の魂
ベットに残る染み一つ
一番年配の女は二十七、八歳、会計係で、客は取らなかったと話していた。学校へ日本軍の慰問に行く人を募集に来た。歌も踊りも、何も特技もないので、断わった。だが、若い女性なら兵隊は喜ぶから、別に何もしなくても、来るだけでよいと言われて応募したが、現地に着くと慰安婦にされたと言う。「私たちは騙されて連れて来られたんです」と話すのを聞き、絶句した。「生家は、朝鮮の田舎では一番大きく有力者です」と話す。家ではキムチ(朝鮮漬)を毎年、十四、五樽も漬けていたそうだ。キムチにはいろいろ種類があり、白菜に唐辛子を入れて、漬ければ出来ると思っていたが、林檎を入れたり、魚の頭から、豚の内臓まで入れて漬けるのだそうだ。その種類によって、キムチの種類が違う。「朝鮮では、キムチをたくさん漬けているといえば、金持ちだ」ということになるらしい。