アジア・フリーク(Asia Freak)

タイを中心にアジア探索の記録

慰安婦問題の解決のために: アジア女性基金の経験から (平凡社新書)

 ■目次

 
第1章 日韓関係の危機と慰安婦問題
(慰安婦問題の第一ラウンド、慰安婦問題の第二ラウンド ほか)
 
第2章 慰安婦問題とはいかなる問題か
(慰安婦とは誰なのか、日本の政府とアジア女性基金の定義 ほか)
 
第3章 河野談話はどうしてできたか
(河野談話日韓条約体制、慰安婦問題の提議と宮沢内閣 ほか)
 
第4章 アジア女性基金はどうして生まれたか
(取られるべき措置の検討、村山内閣の成立以後 ほか)
 
第5章 アジア女性基金の「償い」事業
(フィリピンのでの事業、韓国での事業実施の準備 ほか)
 
第6章 基金解散以後の新展開
(アジア女性基金の解散、立法的解決案の顛末 ほか)
 
第7章 慰安婦問題の解決へ
(運動団体の新提案、慰安婦問題の究明 ほか)
 
 
■レビュー
 
  日本の歴史問題でもある「慰安婦問題」は、人権の観点からも国際的な問題でもある。
  義務教育や高校では、多角的に学ぶ機会のない「慰安婦問題」について知るために、この本を読んでみた。
  いわゆる慰安所は、東南アジアのフィリピン、インドネシアなどにもあり、ビルマミャンマー)からも女性が慰安婦として狩り出されたといわれる。
  東南アジアに関わるものとして、理解しておくべきことだと思う。
 
  慰安婦問題については、櫻井よしこなどは、慰安婦は存在したけど、「あくまでも民間業者の運営であり、日本政府が運営する『従軍』の慰安所ではなく、女性を集める際も、強制性があったことを証明する史料は見つかっていない」などとする見解が、多く見られる。
  この本には、実際の史料も掲載されてあり、客観的な根拠の有無、推測、個人的な思いなど、立て分けて示してあるので、比較的公平性のある本だと思う。
 
  「強制性」についての根拠は、史料が無く、推測によるところが多いようで、戦争を知らない者にとっては、もう少し根拠が欲しいところ。
 
  「従軍性」については、女性の募集、移送手段の確保、慰安所の設置・管理など、慰安婦制度をつくり、支えるための支援を、政府や軍が、積極的にした史料が見つかっていることから、運営は民間企業に任せられていたとはいえ、軍人を対象にした制度であるし、政府がお墨付を与えて積極的に関わったという点から、実質的には「従軍性」があり、慰安所に働く女性は「従軍慰安婦」といえると思う。
 
  信憑性の無い「吉田証言」を、韓国政府、国連(クマラスワミ報告)が認めていることは、問題。
 
  最後に提言されているように、一方的な主張を繰り返して、罵り合うのではなくて、下記のプロセスが解決のために大切だと共感した。
  1. 被害の当事者が納得する解決が大切  ※当事者の高齢化などの現実がある
  2. 日本と各国の民間団体の協議で納得する点を見出す努力が必要
  3. この結果を受けて、双方の政府が解決を図る

  歴史には、必ずしも史料が見つかるとはいえないことも多い。だから、櫻井よしこなどが主張するような、「史料が見つかっていないから、強制性があったとは言えない」とする主張にも、違和感がある。

  本書の始めの方では、終戦時、不都合な資料などは証拠隠滅された、との話も紹介されている。

  さまざまな状況から、「推測」でパズルのピースを埋めることも、しなくてはいけないように思う。