買われる子どもたち 貧困が生むアジア人身売買の地獄絵図
買われる子どもたち 貧困が生むアジア人身売買の地獄絵図 (朝日新聞デジタルSELECT)
- 作者: 朝日新聞社
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2018/01/17
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2011年頃、人身取引について、20ページ程のルポルタージュ(ノンフィクション)。
タイを舞台に、人身売買と臓器売買について描かれたフィクション映画『闇の子供たち』を観て、人身売買、臓器売買の実態を知りたいと思い、すぐ入手できた、大久保真紀 著『買われる子供たち』を読んでみた。
貧困で、働き口もないため、性産業や人身取引に関わるようになる実態についてのルポ。
この状況を改善するため、TRAFCORD、New Life Centre(New Life Foundation?)、アーサー・パッタナー・デック財団といった団体が慈善活動に取り組んでいることの紹介もある。
路上で花売りをしていた子が、寄付金によって大学生となり、貧困の境遇にある子供たちに「勉強すれば物乞いしなくていい、ということを伝えていきたい」という言葉もある。
高等教育を受ければ幸せになれるとは言えないにせよ、基本的な教育がないから、貧困の連鎖、時には命を落とす事例を、東南アジアに来て、何度も身近に体験している。
2018年現在、未だにバンコクで目にする物乞いには、幼い子供たちもいる。
単に寄付金を出せば解決という発想ではなく、社会の実相を認識するために、人身売買、臓器売買の実態を知ることが、まずは必要だと思う。
2011年頃だったか、知り合いの友達がオーナーをしている店があるというので行ってみると、働いていたのは小学生、中学生くらい、10歳前後の子供たち。客は、日本人を含む、幼児性愛者を対象とした店だった。
子供たちに訊くと、お父さんがバンコクに出稼ぎに来ていて、自分はお父さんにここへ連れてこられたなどと言う。
子供たちは、店内で元気にはしゃいでいて、まるで幼稚園か小学校のよう。
そして、子供たちに囲まれて満たされる客たちがいた。
この店は既に閉店したが、この店の土地所有者は警察関係者だというのも実態だった。
違法を取り締まる政府や警察が、賄賂や職権を利用して、違法産業に絡む構図は、今も健在だ。
毎年、アメリカ国務省が発表している「人身取引報告書(Trafficking In Persons report : TIP report)」があり、2017年6月の発表で、日本は4段階のうち、2段階目のTier2として評価された。
最優秀のTier1ではない理由は、技能実習生に対する非人道的対応、性的搾取などの目的での強制労働などの実態があることが理由。
ちなみに、この報告書で「人身取引」とは、強制的に労働や性的行為をさせることと定義される。
Ref. Trafficking In Persons Report 2017
タイのゴーゴーバー(A Go Go bar)や置屋で働く人たちは、基本的には、自分の意思で性産業に入ってきている。
理由は、貧困などのほか、手っ取り早く遊びの金を稼げるからという場合もある。
最初に約束した限度を越えて、客の要求がエスカレートして、喧嘩、殺人に至るケースは、未だにある。
性産業にどっぷり浸かり、教育や技能習得の機会を自ら放棄して、人生を棒に振る人たちも多い。
戦時中の慰安婦についても、論争があるが、「従軍」「強制」だったか否かという議論とは別に、性産業について、金で割り切る関係の弊害について、もっと思慮深くなる必要があると思う。