アジア・フリーク(Asia Freak)

タイを中心にアジア探索の記録

ホセ・リサール(漫画)

ホセ・リサール【単行本版】

ホセ・リサール【単行本版】

 

 

 フィリピンの英雄ホセ・リサール博士(Dr.José Rizal)の生涯について、史実に基づきながら、創作を加えた漫画。

 

 スペインの圧政に対して、フィリピンの民衆に寄り添いながら、武力によらず、民衆ひとりひとりが学び賢くなることで、フィリピンの自由と平等を無血革命で達成しようと、銃殺刑の最期まで祖国に尽くした。

 

  • 中国では、政府の正当性の為、訴える市民を銃殺し戦車で轢き殺すなどした天安門事件
  • 香港の思想・言論の自由の問題。
  • アメリカでは、根深い人種差別。
  • カンボジアでは、主義のため、数百万の国民が犠牲となったポル・ポト時代。政敵を解党、逮捕などして政権を維持しようとするフン・セン政権。
  • 宗教のために、人間性や生命を貶める過激派組織。

 

 時代を経るにつれて、圧倒的な国家の力の前に、国民、市民は、どう対応すればいいのか、という問題意識がある。

 ホセ・リサールの生涯からわかることは、結局は、民衆ひとりひとりが賢くなり、人間がお互い敬意を以って対応(生命尊重)し、この思想を多くの人が共有することが、遠くても着実な道だ、ということ。

 

 例えば、中国では、海外に留学、ボーダレスにビジネスをする人たちは、多角的に物事を知ることになり、中国国内でも大きな影響があることから、中国政府はこれらの人たちを無視できず、真実を隠すこともできず、大気汚染などの環境問題にも対処せざるを得ないなどの変化(一種の無血革命)がみられる。

 

 国家や権力が武力で強大になったとしても、民衆ひとりひとりが賢く、お互いの生命を尊重するという思想が、より沢山の人に共有されることで、国家や権力を適切にコントロールできる可能性があるし、それ以外には方法がないのではないかとも思える。

 生命の尊厳ということを前提にすれば、軍、警察、国家権力についても、その性質はかなり変わるのではないかと思う。

 

 国家権力と民衆との関係について、ホセ・リサールの生涯から、大切な答えをひとつ得たと思う。